みなさんこんにちは、ライターのQuattroです。
突然ですがみなさん、ご自身のクラブセッティングに「ユーティリティー」って入っていますか?
おそらくほとんどの方が上記の質問に「イエス」とお答えになるのではないでしょうか。
(体感的にはほとんどの方が1~2本はバッグに入れている印象です)
アマチュアゴルファーにとって、ユーティリティーはロングアイアンより球が上がり飛距離が出しやすく、ウッドよりもクラブの長さが短くボールにミートしやすい、まさに「魔法の杖」です。
そんなユーティリティーですが、ざっくり分けると「ウッド型」と「アイアン型」の2種類が存在します。一般的にはウッド型のほうが寛容性が高く、球も上がりやすいと言われ、アマチュアゴルファー使用率としても、圧倒的にウッド型のほうが高くなっています。
しかし!今回の本稿で取り上げるのはいわゆる“マイノリティー”である「アイアン型」のほう。使い方・考え方によってはアイアン型ユーティリティーも立派な“武器”になりうるんです。
少し難しいクラブのイメージがあるアイアン型ユーティリティーですが、この記事を読めばあなたも1回は試してみたくなるハズ(笑)。是非最後までお付き合いください。
まず最初にアイアン型ユーティリティーの設計的な特性や思想について解説してみたいと思います。
アイアン・アイアン型ユーティリティー・ウッド型ユーティリティーの3者を比べると、最も大きな違いはその「重心深度」に現れます。
「重心深度」とは、クラブヘッドの重心がクラブのフェース面からどれだけ離れた位置にあるか(≒バックフェース側に寄っていくか)を表した数値です。
(フェース面から赤い丸印までの距離が重心深度)
細かい説明は省きますが、同じロフトのクラブで比較した場合、この重心深度が深ければ深いほど、つまり重心位置がフェース面から遠ざかれば遠ざかるほど、ボールの高さは出しやすくなります。
上記3つのクラブを重心深度が浅い順番に並べると以下の通り。
(重心深度が浅い)
アイアン
↓
アイアン型ユーティリティー
↓
ウッド型ユーティリティー
(重心深度が深い)
(アイアン)
(アイアン型ユーティリティー)
(ウッド型ユーティリティー)
簡単に言えば、アイアン型ユーティリティーは「アイアンよりは球が上がりやすく、ウッド型よりは球が抑えやすいクラブ」ということになりますね。
アイアンよりはラクにボールを上げたいけどウッド型だとボールが上がりすぎてしまう(飛距離をロスしてしまう)という方や、どうしてもウッド型の形状が好きじゃないという方がメーカーさんとしてはメインのターゲットになってくるのではないかと思います。
アイアン型ユーティリティーのメリットは主に以下の3つ。
まず、第一のメリットは「アイアンと同じイメージで打ちやすい」という点です。
ゴルフクラブは一本ごとの役割ももちろん大切ですが、クラブセッティング全体の流れというものもスコアメイクのうえで非常に重要な要素となります。そして14本のセットのなかで最も本数が多いクラブであるアイアンがその“流れ”を作ることは言わずもがな。
このようなクラブセッティングの流れのなかで、アイアン型ユーティリティーには「アイアンと同じようにダウンブローで打っていくことができる」、つまりユーティリティー用のスイングを考える必要がないという点でメリットがあると言えます。
上述したように、アイアン型ユーティリティーはウッド型よりも打ち出し角を抑えるような設計になっています。
打ち出し角を抑えることによって得られる利点は「風に強い球が打てること」です。低い球はターゲットに対して直線的に飛んでいく、つまり滞空時間が短いので風の影響を受けづらくなります。
また、打ち出しが低いと総飛距離に対するランの割合が増え、いわゆる地面を突っ転がしていく「地上戦」がしやすい。ボールを高く上げる空中戦は、ミスした時の曲がり幅も大きくなりますが、地上戦ではより早く地面にボールが着弾しますのでこのようなケガを最小限にとどめることができます。
先ほどの重心深度の話とも関係しますが、アイアン型ユーティリティーはウッド型に比べて重心位置がシャフト軸線上の近くにあるため、フェースを自分の意志の通りに開いたり閉じたりといったことがしやすいです。
少しカットに入れて左のミスを消したり、逆にしっかりとボールを捕まえにいったりして球筋を自ら作っていきたいという方にはメリットが大きいと言えますね。
さて、続いてはデメリットのご紹介。私の考えるアイアン型ユーティリティーのデメリットは以下の3点です。
もちろん「ウッド型に比べれば」という前提ですが、やはり安定したキャリーを出すにはある程度のミート率が要求されるかなと思います。ウッド型であれば多少の打点のミスがあってもボールを拾いあげてくれる補正機能がありますが、その点アイアン型ユーティリティーには少々シビアなインパクトが必要です。
やはり180ヤード以上先のピンを“点”で狙っていくには、ある程度のヘッドスピードとミート率が必要とされるのが正直なところでしょう。
アイアン型ユーティリティーはその名の通り“アイアン”に寄せて作っていますが、ユーティリティーである以上、完璧にアイアンの形をしていない部分もあるわけです。
具体的にはソールの幅が広めだったり、フェースの高さが少し低かったり、「アイアンをいかに易しくするか」という工夫が至る所になされています。その分、見た目的に少し違和感を持ってしまう(構えづらく感じる)方は少なくはありません。
(アイアン型ユーティリティー、アドレスカットでの見た目)
個人的には慣れてしまえばなんてことはないと思うのですが、クラブの「顔」にこだわる方にはちょっと不向きな可能性があります。
最後にアイアン型ユーティリティーが活躍するシチュエーションについてです。
もちろん上記のメリットが生かせるシチュエーションだということは書くまでもないのですが、ここではより具体的なお話をしてみたいと思います。
私が考えるアイアン型ユーティリティーが活躍するシチュエーション、それはズバリ……
「冬ゴルフ」です。
なぜなら、冬は上記のメリットを活かしやすく、かつデメリットを出来るだけ消し去ることが可能だからです。
冬のゴルフ場は「風が強く、芝が枯れ気味」という特性があります。
・風が強い→ボールを低く抑えたい
・芝が枯れている→ランで転がしやすい
このように、冬のゴルフ場においてアイアン型ユーティリティーはそのメリットを十分に引き出しやすいのです。
キャリーが安定しないというデメリットはもちろんありますが、ティーショットをミスしたときのセカンドショットや、パー5のセカンドで刻むとき、つまり「レイアップ」のシチュエーションにおいてキャリーが安定しないことはそこまで大きなマイナス要素とはなりません。
このような状況においては、とにかく大きなミスをせずに前にボールを進めることが大事ですからね(笑)
ちょっと当たり損ねて球が上がらなくても、芝が枯れているぶんだけ前に転がってくれるので、結果としてミスがミスにならない可能性が高くなります。
本稿ではアイアン型ユーティリティーのメリット・デメリットについてまとめてみましたがいかがでしたでしょうか。
少し難しいクラブとして敬遠されがちな印象ですが、使い方・考え方次第では一般的なアマチュアゴルファーにとっても大きな武器になり得ます。
スコアメイクにおいて重要なことは「綺麗なボール」を打つことではなく、「いかに大ミスをしないか」ということです。
かの名プレーヤー、青木功プロも「ゴルフはゴロフ」と仰っていますしね。
理想を追い求めすぎず、結果的に大ケガをしないゴルフに徹するとこが、スコアアップのカギかもしれませんよ!!
文:ライター Quattro